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EUの森林破壊防止規則、世界の産業界から懸念の声
2024/7/28
その他地域のエネルギー

 ブルームバーグ(Bloomberg)は7月23日付のコラムで、EUの森林破壊防止のための評価調査(デューデリジェンス)規則(EUDR:EU Deforestation Regulation)に関して、世界の産業界から、目的意識には賛同するものの、規制手段の実施に向けては課題が多いと懸念する声が相次いでいることを報じた。

 EUは地球環境問題に対処するために、森林由来商品(カカオ、パーム油、天然ゴム、木材等)の輸入側で世界の森林破壊を防止する取り組みを強化しなければならないと考え、欧州グリーンディールの一環として、2023年6月にEUDRを成立させた。 

 EUDRは、気候変動対策と生物多様性の保護のため、EU域内で販売、もしくは域内から輸出する対象品が森林破壊によって開発された農地で生産されていないこと(「森林破壊フリー」)を確認するデューデリジェンスの実施を企業に義務付けるもの。森林関連製品のサプライチェーンを遡り、収穫地の緯度・経度情報を突き止める完全なトレーサビリティ(追跡可能性)の確保が求められる。罰則規定もあり、違反事業者にはEU域内での年間売上高の4%以上の罰金が科され、公共調達から一時除外される。

 この規則に基づくデューデリジェンス義務は、2024年12月30日から大企業に、2025年6月30日から中小企業に対して適用される。このため、産業界からは準備プロセスで多くの懸念や不満が表明されている。

 最初に抗議の声を上げたのは農産物生産国で、EUが求める収穫承認に必要な高度なマッピングツールを持たない小規模農家が不当に罰せられる恐れがあると主張した。パーム油の主要生産国であるインドネシアは、EUを「規制帝国主義」と非難した。

 また、米国を含む主要貿易相手国からも不満の声があがっている。サプライチェーン全体をどう規制するのか、どの国の当局が規則を監督するのか、大量の必要書類への対処はどうなるのかなど、なお不明瞭な点が多いことが指摘されている。ブルームバーグによると、飼料供給業者や穀物取引業者など20の業界団体は声明を出し、規則の詳細が詰められていないため、供給の混乱とインフレを招くと警告した。EU加盟国のオーストリアは、ルールの延期と大幅な改定を求めている。

 これに対して、欧州委員会は若干の譲歩もした。当初、各国を森林破壊リスクレベルにより、高度・標準・低度の3つに分類する予定だったが、時間的余裕がないため、レベル分けをやめた。その結果、森林破壊リスクが高い国に有利になる一方、スウェーデンや米国などリスクが低いと見られる国は想定以上に煩雑な審査を受けることになり、いらだちを募らせるだろうとブルームバーグは指摘している。

  いずれにしろ、規則の適用が始まる12月31日までの残り時間は少なく、EUが延期を決めたとしても選択肢は限られる。また、欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長が再選されたばかりで、EUが新たな立法サイクルに入っていることも検討の足をひっぱっている。

 

(Bloomberg 7月23日)