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【石油・天然ガス】

6月期のサウジ原油輸入量が84%の大幅増 中国の原油輸入構造に変化 供給多元化が民営企業に追い風 (19/08/01)
2019/8/1
中国【石油・天然ガス】

 原油輸入構造に変化

 中国の原油輸入構造に変化が生じつつある。3年連続で中国への最大の原油輸出国であったロシアがサウジアラビアに抜かれた。2019年6月に中国がサウジアラビアから輸入した原油は過去最高の772万トン、前年同月比84%の大幅増になり、サウジアラビアは中国への最大原油供給国になった。第2位はロシアの715万トン、第3位はアンゴラの443万トン。こうした変化は、1つにはサウジアラムコと中国の複数の製油事業の協力が本格化し、必然的にサウジアラビアからの原油供給が増えたことがある。もう1つは地政学的影響により中国がイランからの原油輸入を減らしたことがある。中国が6月にイランから輸入した原油は前年同月に比べ60%近く減少した。

 「これまでロシアが中国の最大の原油輸入先であったが、5月からサウジアラムコが恒力石化と浙江石化の民営企業2社への原油供給を開始し、そのため、サウジアラビアからの原油輸入の割合が増えた」と中央石油企業本社の石油専門家が明かした。

 対外経済貿易大学の董秀成教授によると、中国国内の原油生産コストは原油輸入コストを上回っているため、原油輸入量は必ず増加することになる。現在、中国の原油対外依存度は72%に達しており、そのため、原油輸入先の多元化が進む。

 第1期が操業を開始した浙江石化は栄盛控股、桐昆集団?、巨化集団など民営企業がサウジアラムコと共同で1,730億元投資する大型石油化学基地である。また、恒力石化の年産2000万トンの石油化学一体化事業も正式操業を開始し、サウジアラムコが中国への原油供給を急速に増やすのは必然の流れになる。

 「中国は今や世界最大の原油輸入国であり、石油製品生産国でもある。そのため、サウジアラムコは一貫して中国市場に注目している。これまでサウジアラムコはシノペックやCNPCと協力してきたが、恒力石化と浙江石化の操業に伴い、再び中国民営企業に投資することになる」と浙江省の官僚は述べた。

 サウジアラビアだけでなく、ロシア、米国、イラン、イラク等の主要産油国も中国市場に注目している。但し、原油輸入構造も地政学的影響を受ける。

 2017年頃は米国からの輸入原油が極めて大きなシェアを占めていたが、2018年以降は米中貿易摩擦のため米国産原油の輸入量は下がった。2019年1〜6月の輸入量は212万トンに下がり、前年同期に比べ76.2%の減少になった。

 また、2019年6月のイラン原油輸入量は前年同月に比べ減少した。これは米国がイラン制裁猶予を撤回したためである。中国税関総署の統計によると、2019年1〜6月に中国がイランから輸入した原油は前年同期より30%減少し、1,103万トン、44.73万B/Dとなった。

 民営企業のチャンス

 原油供給の充足と多元化は石油製品市場を支える。

 もっとも、中国の石油製品過剰は目下深刻である。石油化学工業規画院の白頤副院長によると、中国の製油産業の生産能力過剰率は概ね13〜18%になる。中国の年間の石油製品消費量は3.15億トンであり、石油製品の収率を65%、稼動率を80%として試算すると、合理的な製油能力は6.1億トン/年になる。然るに、現在の中国の製油能力は7.48億トン/年に達しており、過剰能力は1.38億トン/年になる。世界の製油企業の平均稼動率を83%として試算すると、中国の製油能力は1億トン過剰ということになる。

 しかしながら、民営企業の大多数はこれを最良の機会と見なしている。

 「石油製品の供給が増えると、価格とサービスが重要な側面になり、民営企業に優位がある」とサービスステーションの経営者が断言する。

 もっと重要なのは、中国が化学品、特に精密化学品と特殊化学品を大量に輸入していることである。「中国企業はハイエンドへの転換を速やかに進めなければならない。これまで中国の化学品はトン単位で販売していた、将来はキログラムや場合によってはグラム単位で販売できるようになると良い」と中国石化工業聯合会情報市場部の祝昉主任は言う。

 祝昉主任が言うには、Evonikなど多国籍化学メジャーの医療用化学品の価格は中国のローエンド製品の10倍であり、もし中国企業がハイエンド化学品の生産を実現できれば、巨大な収益の余地が生まれる。

 7月30日、Evonik中国法人は高性能ポリマー製品ポートフォリオの販売を開始した。これは正に多くの民営企業が相次いで精密化学、特殊化学への転換を進めているからに他ならない。

 ハニウェルUOP中国エリア副総裁兼社長の劉茂樹氏によると、山東天弘化学、山東匯豊石化、江蘇?嘉瑞化工など多数の企業はハニウェルのOleflexTM技術を採用してポリマーグレードプロピレン(PGP)を生産し、ハイエンド化学工業への転換を実現している。

 劉茂樹氏は「石油化学産業はチャレンジに直面している。市場需要は日増しに増加しているが、環境保護法規はますます厳格になっている。そのため、今後は必然的にハニウェルのOleflexTM技術が地方製油所の非常に多くのプラントで運用されることになろう」と述べた。

 (21世紀経済報道 8月1日)